アルノー・デプレシャン監督からのメッセージ

3月11日、地震発生時に仙台の映画館では『クリスマス・ストーリー』が上映されていました。
デプレシャン監督から届いたメッセージ2通を掲載します。
東京日仏学院の坂本安美さんに訳していただきました。

FILMMAKERS FOR JAPANのサイトでは世界各国の映画監督たちからのメッセージが掲載されています。

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地震が起きたその日、日本のみなさんが瓦礫の下敷きになってはいまいか、と恐れました。
私の友人であるみなさんが、建物の下にいるのではないかと。
翌日、あなたや、あなたのご家族が、津波にさらわれてしまったらどうしようか、と恐れました。
海の近くに住んでいるのだろうか、大丈夫だろうかと。

その後、福島第一原発の状況を知り、放射線の雲があなた方を襲ってしまったらどうしようと、恐れました。そして数千人にも及ぶ被災地のみなさんが、食糧が不足し、寒さの中で避難している…。

いったいなにを考えればいいのか。なにも考えられず、途方にくれています。
フランスの新聞は、日本のみなさんが日常生活を取り戻し始めていると報道しています。
でも私はまだこのショックと恐怖から立ち直れないでいます。

10本、20本、いいえ、100本の日本映画が私の頭の中を走馬灯のように浮んできます。
それらの作品が、あなた方と心を共にすることを可能にしてくれます。

今朝、私は、再び、あなた方を想い、心配しながら目を覚ましました。
私の人生にとって、あなた方が、そして日本がいかに大切な存在であるのか、気づかされました。あなた方は私を受け入れてくれた。
私はそのあなた方に、今、伝えるにふさわしい言葉を見つけられずにいます。

3月17日、パリにて
アルノー・デプレシャン

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親愛なる東北のみなさん、

仙台を地震が襲ったとき、『クリスマス・ストーリー』が上映されていたなんて!
配給会社の方から、観客の方、スタッフの方、みなさんがご無事だったと聞くことができて安心しました。
映画館とは、自分たちの恐怖や欲望を、毛布に温かく包まれながら懐中電灯で映し出す、避難場所のような空間であってほしい、常々そう願っている僕にとって、それは目がくらむような出来事でした。
親愛なる東北のみなさん、仙台のみなさん、そして配給スタッフのみなさん、僕は、毎日、この脆弱で、儚い世界を目にして、あなた方が私にとってどれほど大切であるか感じています。
いつか、夏の夕べ、東京、あるいは仙台の芝生の上で。
僕はあなた方の隣に座り、日本のビールを傾けながら、野外に設置された大きなスクリーンで日本の映画を見る。
僕の日本の友人はそっと耳元で通訳をしてくれる。
そして、そして、亡くなった方々を想いながら、僕は、あなた方とともに涙を流すでしょう。

2011年3月23日(月)
アルノー・デプレシャン